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7月あいさつ

今年は梅雨らしい梅雨で雨の多いこと、蒸し暑いことです。沖縄が梅雨明けしてからがこちらの雨本番なのですが、しきりに線状降水帯という言葉を聞きます。大昔からあったことだけれども頻回に起こるようになって、あるいは被害が甚大になってきて世間の(専門家たちの)注意を引くようになって、そう言えば欧米の報告や文献にあったなとその直訳を充てて事足れりとするお定まりです。ちなみにlinear rain belt です、そのままの訳語です。芸がないと言うのか、下手な意訳するよりは咎めが少ないと心得ているんでしょうね。LGBT法のジェンダーアイデンティティ―がいい見本です。こっちは何のこっちゃわからぬ方がいいという選択でしょう。性自認とか性同一性とどちらがわかり易いか。いえ、こっちの場合は理解のしやすさよりも曖昧さを選んでますね。世間を煙に巻く目的か、周知衆知を目的としてるか。と、外国(語)の概念を日本語に置き換えるには文化の違いが立ちはだかりますから、悩みだしたらキリがなく、適当な訳語がないという結果になりがちです。それはつまり逐語訳への安直です。identity なんてニュアンスを持つ日本語(単語)はないでしょう。昔明治の初めに西周が次々に新しい訳語を作り出したのは有名ですが、どれも日本語にない概念だったのですね。哲学、芸術、理性、科学、技術などが有名です。もちろん別の日本語でも言い換えられたのでしょうが一語で表すという意味でです。で、逐語訳に流れていく、上記の線状降水帯です。それもできねば読んだまんまのカタカナ表記で。rain を雨とせずに降水としたのは語呂を考えたのでしょうね、こっちの方が恰好いいと。線状雨帯よりはこっちの方がいい。何だかこうやって種明かしされるとなぁんだとがっかりすることではあります。梅雨が明ければきっと今年もきつい夏でしょう。皆様にはどうぞご自愛なさいますように。

今月もよろしくお付き合いください。

2023.7.1          弘田 直樹

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