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2月のごあいさつ

冬の早朝は三文の得を感じることが多いです。外の景色です。もちろん晴れている朝です、放射冷却で周りの田畑一面に霜が降りている寒い朝です。

当地では「おおじも(大霜)が降りちょる」と言います。夜のうちで一番暗いと言われる明ける前から暁、曙、東雲、朝ぼらけと日本人は日の出模様を区別してきました、この感性です。体感できます。陽が昇って来るに沿って明るさもそうなのですが、空一面に繰り広げられる大パノラマです。黒、紺、紫、青、橙、白のグラデーションです。これは寒い冬が一番美しいです。冬はつとめて、なのです。もっとも、清少納言がつきづきしと嘆じたのはこの景色ではないのですが。当地ではそろそろ日が長くなるころです、朝6時頃から始まります。冬至の頃を中心にほぼ二カ月長い夜が続くのですが、一旦陽の昇りが早くなり始めると日に日にという感じで勢いがつきます。まだ楽しめます、寒い早朝の東の空を愛でるも一興です、皆様。そして西側には月です。望以降の月齢の月は夜明け時には西の空に残ります。月明かりは歌の文句の通りに青いのだと実感するのも冬のことです。皓々と照る月は冬のものです。これに雪があればさぞや明るいことだろうと思うことですが、間抜けなことにこの年齢になるまで一面の雪景色を観たことがありません。雪明りたるやさぞやとは想像することです。特に望前後の大きな月の時には西に傾き沈もうとする前に橙を増していく様は美しいです。月明かりが朝陽に呑み込まれていく様。空の西と東で時々刻々変化していくドラマ。早起きされるのも悪くありませんよ。

今月もよろしくお付き合いください。     2021.2.1    弘田直樹

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