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9月のご挨拶です。

9月が秋だったのは旧暦の話で、現代では9月までが夏そのままです。敢えて言えば、9月は盛夏を過ぎた残夏。旧暦を言えば7月も8月も江戸時代以前は秋だったのでした、1月如月から春が始まると数えるわけです。仲秋の名月は8月15日ですがそれは旧暦の話です、太陽暦にそのまま当て嵌められません。真夏の終戦記念日が仲秋ではありません。今年の暦で言えば、昔の人が愛でた名月は9月30日の満月です。今の暦と旧暦との違いを感じられたことがありますか。初春、なんてのも正月寒い時にどうして?ですよね。今年の旧正月は1月23日でした、という具合に。およそ一カ月、旧暦の方が遅いんですね。いえ、別に蘊蓄(うんちく)垂れているのではなくて、9月といっても初秋なんて思ってるとがっかりしますねと言いたいだけです。暑いですもの・・でも、昼間のうだる暑さはそのままでも、朝夜は涼しくなります、これも確かです。

夕方が早くやってきます、影が長くなります、陽の光が柔らかくなります。この季節感。サトウハチローが小さい秋と呼んだ、あれです。すだく蝉の声から夜の虫の音に変わります。西洋人は蝉や鈴虫の声を雑音(ノイズ)としか受けとらないなんてよく聞きますが本当ですかね。風鈴や鹿おどし、水琴窟(すいきんくつ)の音に風情を感じるのは日本人だけだとも自慢げによく言いますが、これも本当でしょうかね。岩に沁み入る蝉の声。この静寂感は、いつ読んでも凄い句だなと思うのですが、でもやはり日本人のDNAしか共鳴しない、感受性の真ん中にある琴線(きんせん)でしょうか。この句を読むだけで、真夏の山道、強い日差し、草いきれ、木陰に佇み気がつくと、一帯を包む蝉の声と谷川のせせらぎとそれしか聞こえない深い静けさ、その場面情景がさぁーっと浮かびますでしょう。日本人だけかなと、ここは納得する思いです。あのキーンさんでも頭では分かってても・・・の感性ではないでしょうか。暑いときには暑い時の情緒、趣きであります。が、凡人にはどうにも、暑い!が先に来て、深みも嗜みもあったもんじゃありません。と、言いつつ、暦は巡りゆきます。秋への入り口です。

楽しんで参りましょう。

2012.9.1???? 弘田直樹

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