• マージーボックス

5月ですね。

大震災大津波で止まった時間でしたが、しかし大自然はその瞬間から何ごともなかったかのように永遠の繰り返しに戻ります。

日は暮れまた昇る。潮は満ち引きまた満ちてきます。
人の怒りや悲しみを置き去りにするかのごとく、
知らん顔して日々の繰り返しに戻って行きます。

惨劇に追い打ちをかけるような寒さ、冷たい雨、そして雪。その一方で嘘のような美しい夕焼け。一万人を超える人々を引きこみ底に沈めたままの穏やかな海。人知の届かぬことを畏れよ。天罰であれ天の啓示であれ表現はいかようであっても、人が生きている環境を自由にできる支配できるという驕り過信が叩き潰されたこの事実を謙虚に受け止める時なのでありましょう。

そしてこれは、根拠のない迷信の類と笑い飛ばされてきた“まじない祈祷にすがってきた大昔”となんら変わらぬことであることに心を致さねばならぬと思います。科学の進歩、それは技術の進歩、利便性・効率の追求でしたが、大自然への畏れ、神への畏れを捨て去ることでもありました。

根拠のない、は、現在の人間の持つ道具では解明できないという意味でありました。嘘でも空想事でもなく、単にわからないことを科学的根拠がないとごまかしていただけでした。わからないことをわからないと言わなかっただけでした。そうであることを自然が教えてくれました。

それを昔の人は神が教えてくれると表現したのでした。

神がいるかいないかの話ではありません。一神教か多神教かの話ではありません。この世の中は未だ人知の届かないことだらけであるという事実なのです。

私達は驕りから覚めねばなりません。自然を、神を、わからぬことを畏れねばならぬのです。強くそう思っています。

2011.5.1     弘田直樹

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