5月挨拶

 大地震はどこで起こっても困ることなのですが、東京を襲うであろう直下型地震、広範な太平洋沿岸地域に甚大な被害をもたらすとされる南海トラフ地震がその象徴として挙げられていますから、それ以外の地区はいわばノーマークです。今次の熊本地震もええ?の典型でしたか。誰も何の警戒もしてない所へ果たして来る。すると必ず「それ見たことか」という者が出て来る。「だから言ったじゃないか」とするりと向こう側に回って批難する者が出て来る。責める相手は行政ですから一方的です、決して仕返しされませんから言いたい放題です。熊本は地震のない地域ではない、300年400年前にはこういう記録があると引っ張り出してどうだ?!とデータを揃えて「科学的に」批判する。何の役に立ちましょうや、事が起こってからあれこれ遡って言いたてても。地震は活断層型とプレート型に大きく分けられるようで、阪神淡路や山古志村が前者、東北大津波が後者。東京に来るのが前者、南海トラフは後者。活断層は日本中に存在するのだと今更のように、原発再稼働反対運動の最大の根拠にされているのはご存知の通りですが、専門家が地図を指し示します。山口県にも大きなのが3本あって、その一つはJR岩徳線に沿って存在して、ここが揺れたら当地柳井も大被害でしょう。どうか歪みが溜まっていませんようにと、学者の口吻を真似ることです。でも所詮はそこに住んでいることの因果応報です、そこで生きているから被る災害。分類区分けは学者の学問上の便宜でしかないのです、地震が起こればどれも同じ結果ですから。あの東北大地震大津波の後にそこに住む人が言ってました、海から今迄あれだけの恵みを受けてきたのだ、こういうことも辛抱せねばならぬことだと。この言葉に極まると思うのです。恩恵も災禍もその地に生きていればこその必然です。深い諦観。周りがガチャガチャ騒ぎ立てる(安全地帯にいて同情するふりをしながら被害の大きさを映画のように楽しんでいるのですから)ことではないのです。被災者を見世物にしていることにも気づいていないふりですから。ここにも偽善と欺瞞の満ち充ちていることです。

2016.5.1  弘田直樹

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