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3月のご挨拶

今の季節感で言えば冬は12月?2月なのでしょうが、旧暦では神無月から臘月まで、正月(睦月)は新春ですから。如月も春です、春きさらぎの望月の頃、です。旧暦と新暦はほぼ一カ月半の時間差がありますから、今の2月は旧暦の12月から1月、2月19日が旧正月(旧暦の元日)、ここからが春。この辺りから日が長くなりますね確かに。朝が早くなる、日の暮れが遅くなる。2月の末は確かに春の気配がどんどん濃くなります。西行が詠った如月の望月の日は今年は3月6日です。3月は初春ではなくて春爛漫であるわけです。そう思うとそういう気になります。少し肌寒い日が混じりつつ、でも陽は和らかく長くなる、木々が芽吹く準備を始める、風がやわらかくなる、それが春で。もっとも、盛りはいつか、には感じ方の差がありましょう、入学式の頃をそう呼ぶか、もっと遅く鯉のぼりの頃なのか。5月5日は旧暦で3月17日です。晩春、初夏ですな。昔の人の季節感を追う気持ちになります。月の満ち欠けを基にした暦のしっとりさ、色気と言ってもいいんじゃないでしょうか。海の動物はおろかヒトの生き死にのリズムも同期させる魔力、神秘性。さらに閏月という単純な数合わせで強引にアジャストしていくアバウトさ、乱暴さ。懐の深さというべきかのどかだったというべきか、でもこれがヒトの本来のリズムなのでしょう。日の出から日没まで。時刻はこの長さに従い季節により変化する。今で言うサマータイムですが、勤労時間の定めなどありませんから、早く動き始めて長く働く、それが実りの夏秋の働き方であるわけです。冬はその逆。日の出から日没まで働け動け。単純でこれ以上わかりやすい基準もないわけです。何やらの金属の発信数だかを基準にすると何億年に一秒のずれしか生じないらしいですが、そんな正確さなぞはヒトの暮らしには実は要らぬのです。冬には皎皎と冴え冴えと映える月を見上げて、春には山の端に低く大きくかかる朧月に見入る。月の満ち欠け潮の満ち引きに同期する体で、正確な365等分24等分時刻に応じているわけです。この季節が旧暦の艶っぽさを感じるには一番だと思うのですが、いかがですか。

2015.3.1 弘田直樹

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