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6月のご挨拶

 熊本地震も何とか治まり(TVが報道に飽きただけなのでしょうか、震度1以上が何千回と言わなくなりました)、当地への波及をそれなりに構えていたこと、活断層が近くを走っていると何度も知らされてましたから、でしたが現金なものですぐに忘れてます。ずいぶん昔の事のように思います、ひとえに余所の出来事だからです。目に前に見えぬからです。崩れたままの我が家を毎日見るのとの落差は天地の懸隔です。我が身の幸運無事を感謝しつつ忘れるわけです。他人事となれば勝手なことですが、これが人の心の第一の保護維持機構だと思います。忘れることの効用効能は甚大です。認知症も実は人の心の逃避反応であるとか防御反応であるとかの考え方を読んだことがありますが、あながちトンデモ話でもないことでしょう。人は忘れるから次に向かえる。もともと記憶能には容量が限られていて空きを作らねば次が入らない、だから忘れるのだとか、新たなことに向かうためのリセット目的だとか、これも諸説を読んだことがありますが、学者の講釈は措いても私達が毎日の生活の上で実感することで真実です。時間が解決してくれる。時ぐすり。昔からの知恵です。今は悲しいけれどやがて薄れていく、それを誰もが知っている、皆が経験することだからです。怒りも悔しさもしんどさも、どの感情もそうです。今は怒り心頭に発していてもものの2時間も経てば嫌でも鎮まります。怒り続けるは却って難しいことです。これも覚えのあることでしょう?思い出しては腹が立つ。これはよくありますが、怒りが持続はしませんね。すぐに忘れてます。心の保護作用防御作用ですね。忘れてはならぬ、風化させてはならぬ。よく言われますが、これは別の意味の忘れです。なかったことにしてはならぬという意味です。人は忘れるから明日に向かえる。怖かったね、辛かったね、悲しかったね。過去の出来事にしてしまう機構。この、誰にも備わった最大の回復機能を、心のケアとかカウンセリングとかのお節介で台無しにしてしまう愚行が強要されてます。悲しい時は悲しいなりに過ぎていくしかないのです。眠れぬ夜、悪夢にうなされる夜、いたずらに人恋しい思い、子供であれば幼児返り、夜泣き等々は全く正常な心の反応です。そこを越えてくぐって回復していくのです。そばにいてやるのは親でいいのです、マニュアル通りの事しか言えぬ専門家など要りません。やがて忘れます。忘れるから立ち直れるのです。と、ささいなもの忘れに気づいている昨今、実はこう嘯いているのです。自分に向けての警句でもあります。御同輩、ものは考えようなのです。
               2016.6.1 ? ? ? 弘田直樹

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